「FXの確定申告では経費を引けるって聞いたけど、そもそも経費はどうやって申告書に書けばいいの?」
初めてFX(外国為替証拠金取引)で確定申告をする場合、確定申告の時期にこんな悩みを抱く方が多い様です。
個人事業主ならまだしも、会社勤めのサラリーマンの場合は住宅ローン控除や医療費控除、ふるさと納税などがない限り確定申告をする事はなかなか無いですよね。
確定申告は初めてする方にはとっつきにくいものなので、「経費の書き方なんて分からないからそのまま取引報告書の数字で申告してしまえ!」と思ってしまいがちです。
しかし、経費計上すれば所得税や住民税は安くなりますし、書き方自体は一度覚えれば後はとても簡単です!
そこで、この記事では確定申告書上でFXの経費をどの様にして書けばいいか、書き方や記入例について見ていきましょう。
確定申告をする上で、FXの経費として認められるとどうなる?
FXの所得は「先物取引に係る雑所得」に該当するのですが、雑所得は以下の計算式で求めます(雑所得に限らず、多くの所得が同じ考え方です)。
総収入金額ー必要経費=雑所得
参照元:No.1500 雑所得|国税庁
総収入金額はFXによる取引利益(為替差益+スワップポイント)の事を意味しているので、FX業者から送られてくる年間損益報告書を見ればわかります。
そこから、さらに利益を得るために必要だった経費を引くことが出来るのです!
必要経費を引けばそれだけFXの所得が減るので最終的な税金も減ります。つまり、「FXで利益を得るために必要となった経費があるのであれば、税金の計算をする際に計上しておかないと損をしてしまう」、ということですね。
FXの経費として認められるものは?
では、FXの経費として認められるものにはどういったものがあるのでしょう。
この点、所得税法第37条1項では、以下の様なものが必要経費になると規定されています。
・総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
・その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
これをFXについて当てはめてみると、例えば以下の様な必要経費が計上出来そうですね。
- FXをするためのパソコン購入費用
- FXをするためのネットの料金
- FX関連の書籍代
- FX関連のセミナー参加費用
- 銀行振込手数料
- 交通費
- 光熱費
- 事務用品費
今まで必要経費について考えた事がなかった方は、一度FXで利益を得るためにどんな経費がかかったのか洗い出してみると良いでしょう。
必要経費として認められるかどうかについては、より詳しい解説を下記記事でしているので、参考にしてみてください。
確定申告書上での、FXの必要経費の書き方や記入例【令和5年分対応】
前置きが長くなってしまいましたが、本題に入っていきましょう。
FXの利益があって確定申告の必要な方は、「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」というものを作成して確定申告書とセットで提出しなければなりません。
こういった書類ですね。中でも、赤枠で囲んだ箇所が必要経費を書く欄です(一般的に確定申告書と言われている第1表〜第4表には、FXの必要経費金額を書く欄は有りません)。
以下で、1つずつ内容を見てみましょう。
手数料等
ここでいう手数料等とは、FX取引をする際にFX業者に対して支払う手数料の事です。
FXに関連して発生する手数料には主に以下の様なものがあります。
- ①委託手数料
- ②口座開設時の手数料
- ③口座管理費用
- ④証拠金の入出金にかかる手数料
- ⑤スプレッド
中でも発生することが多いのは委託手数料ですね。委託手数料は、取引をする度に1取引単位(1枚)あたり○円という感じで支払う手数料です。
主にくりっく365を利用した場合に発生するもので、取引量に応じて変動することが多いですね。中には、楽天証券の様にくりっく365を利用する場合の委託手数料が無料の業者もあります(店頭FX業者を利用する場合は基本的に手数料無料)。
委託手数料が発生した場合は、年間損益報告書の手数料欄に金額が記載されているので、その金額を明細に記入しましょう。
②口座開設時の手数料、③口座管理費用、④証拠金の入出金にかかる手数料については、基本的に発生する事が無いでしょうから無視して構いません。万が一発生していたとしても、委託手数料と同様に年間損益報告書の手数料欄に記載されているので、金額をそのまま記入すればOK。
⑤のスプレッドは、FX取引の際に表示される「買値(Ask)」と「売値(Bid)」の差額の事で、FX業者の利益源となるものですね。スプレッドを手数料と考える事も出来なくはないでしょうが、これは取引に組み込まれているものなので、確定申告をする上では手数料とは考えません。よってスプレッドは無視です。
従って、手数料等の欄に書く可能性があるとすれば、委託手数料くらいでしょう。
②に係る取得費
次に「②に係る取得費」ですが、そもそもFXによる取引では②の「譲渡による収入金額」の欄に金額を入れる事が無いので、ここに数字を入れる必要はありません。
従って、空欄のままでOK!
その他の経費(パソコン購入費用・セミナー代・通信費・新聞・書籍など)
ここがやっと、パソコン代やセミナー代といった必要経費を入力する欄です。
書籍代やセミナー代、通信費など必要経費の内容ごとに合計金額(領収書毎に記入するのではないです!)を記入していきましょう。
元々の用紙には記入欄が⑦〜⑨の3つしかないので、書ききれない場合は用紙を追加して書く様にしましょうね。
「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」の記入例
どこに何を書くかがわかったところで、実際計算明細書の書き方を見てみましょう。
必要経費としては、手数料等20,000円、セミナー参加費15,000円、FX関連書籍代9,800円、セミナー参加時の交通費6,000円があったとします。
記載例は以下の通り。
どうですか?簡単ですよね。実際にかかった必要経費をここに書くだけで、所得税や住民税が減るのだから面倒臭がって書かないのはとても勿体無いですね。
なお、必要経費として計上した分の領収書については、申告書の裏に貼ったりして税務署に提出する必要は有りません!自宅で申告書の控えと共に大切に保管しておきましょう
加えて、FXをしていて年間取引合計で損失が発生した場合は、確定申告をする事でその損失を3年間繰越出来ますので、赤字の場合でも忘れずに確定申告をするようにしましょうね!
イータックス(e-Tax)を利用して確定申告をする場合のFX経費の書き方
手書きで確定申告書を作るのは面倒だけど、電子証明書とか難しい事はわからないからイータックス(e-Tax)もしたくない、という方もいるでしょう。
そういう方はイータックスのサイトを利用して申告書を作り、書面で税務署に提出するという方法も有ります。計算間違いをする事もなく、画面の指示に従っていけば簡単に申告書が作れるのでとても便利ですよ(もちろんそのまま電子申告してもOK)。
以下では、イータックスを利用してFXの必要経費を記入する方法を見てみましょう。
なお、イータックスの所得税及び復興特別所得税の確定申告書作成コーナーでは、以下の様に複数のステップが有ります。
- ①事前準備
- ②入力方法選択
- ③申告書の作成をはじめる前に
- ④収入金額・所得金額入力
- ⑤所得控除入力
- ⑥税額控除・その他の項目の入力
- ⑦計算結果確認
- ⑧住民税等入力
- ⑨住所・指名等入力
- ⑩申告書等の送信・印刷
その中でも、ここでは「収入金額・所得金額入力」のステップの中にある「先物取引に係る雑所得等の入力必要経費の入力」に限定して紹介していきます。
「先物取引に係る雑所得等の入力必要経費の入力」のページは以下の様な感じとなっています。中でも、必要経費に関する部分は赤枠で囲んだ箇所です。
記入の仕方は、紙に書くときと同じです。実際に入力してみたので見てみましょう。
集計を自分でする必要が無いのでとても楽ですね〜、字を書くのがあまり得意でない方にもオススメです。
最後に
FXの利益を確定申告する際の、必要経費の書き方や記入例についてみてきました。
確定申告と聞くと拒否反応を示す方もいますが、必要経費がかかったのであれば面倒臭がらずにきちんと計上をすべきです。脱税はダメですが、無駄に税金を払う必要も無いですからね。
一度申告書の書き方をマスターすれば、翌年以降は基本的に同じ事の繰り返しです。ここでしっかりとマスターしておきましょう。