【個人事業主向け】しっかり分かる一括償却資産とは!少額減価償却資産との違いや仕訳の具体例も解説!

一括償却資産の意味減価償却

個人事業主が固定資産を取得した場合、通常は資産計上を行い、定められた減価償却方法によって毎年度費用処理していくことになります。

しかし、金額の小さな減価償却資産に関しては事務処理負担の軽減等の観点から、簡易的な処理が認められています。

種類としては以下の3つ。

  • ①少額減価償却資産・・・10万円未満の資産を一時に費用処理する制度
  • ②一括償却資産・・・10万円以上20万円未満の資産を3年で費用処理できる制度
  • 少額減価償却資産の特例・・・30万円未満の資産について一時に費用処理できる制度

今回はこの中でも「②一括償却資産」に焦点を当て、一括償却資産の特徴やメリットから仕訳・申告方法まで紹介していきます。

減価償却制度がそもそもまだ理解できていない・・・という方は「減価償却とは?減価償却費の計算方法から目的までポイントがマルっと分かる記事」を先に読んでくださいね!

一括償却資産とは?

一括償却資産とは

一括償却資産とは、取得価額が10万円以上20万円未満の償却資産のことで、一括償却資産の減価償却は取得年度を含む3年間で均等に償却していきます。

白色申告者・青色申告者に関わらず利用することができる制度で、利用金額の上限もありません。

以下、一括償却資産の主要な特徴を簡単にまとめていきたいと思います。

  • 月の途中の取得でも1年分の償却が可能
  • 費用の前倒し処理が可能(&耐用年数を調べる手間が省ける)
  • 償却資産税の課税対象にならない
  • 除却しても一気に費用計上は出来ない

○:月の途中でも1年分の償却が可能

通常、減価償却費の計算は月割で行いますが、一括償却資産の償却は年度単位で行うため、期の途中で取得したとしても1年分の償却が可能となります(参考:所得税法施行令139条)

たとえ月の途中で取得したとしても「取得価額÷3」の金額を減価償却費として計上出来るので、使い方によっては節税になります。

法人は「一括償却資産の取得価額×該当事業年度の月数÷36」で計算を行うので、決算期の変更をした場合などは必ずしも3年で償却出来ません。

○:費用の前倒し処理が可能(&耐用年数を調べる手間が省ける)

耐用年数省令を見ると固定資産の耐用年数は3年を超えるものが多いです。

例えば、事務机は金属製のものは15年、金属製以外のものは8年となっており、かなり長期で減価償却を行っていく必要があります。

しかし、これらを一括償却資産で処理すれば3年で費用計上可能です。つまり、耐用年数が3年よりも長いものを一括償却資産として処理すれば費用の前倒し処理が可能になるのです()。

注:ただし、利益が出てないのに費用計上額が増えてもあまり意味はないですけどね。

加えて言うと、一括償却資産に該当すれば耐用年数を調べて無くていいので手間が省けますね。耐用年数を決めるのって結構大変ですから、逆にありがたい事かもしれません。

○:償却資産税の課税対象にならない

償却資産税とは、土地や家屋・車両以外の償却資産にかけられる固定資産税のことを言います。

その年の1月1日時点の償却資産の合計額が150万円以上の場合に課税されますが(参考:地方税法351条)、一括償却資産の残高はこの合計額に含まれません。

150万円を超えているかどうかを判定する時は一括償却資産の残高を除いて計算します。つまり、一括償却資産は償却資産税の課税対象外資産になるという事。

一方で、「通常の減価償却資産として処理した場合」や「少額減価償却資産の特例を利用した場合」は償却資産税の課税対象となります。

ちなみに償却資産税の税額は「償却資産の合計額×1.4%」で通常計算されますよ。

☓:除却・売却しても一気に費用計上は出来ない

通常、固定資産を除却(廃棄)や売却すると、固定資産の残高は無くなります。

しかし、一括償却資産は除却・売却をしても、除却等をした年に一気に費用計上は出来ません。
3年で償却させてあげる代わりに、3年は必ず固定資産として計上してねっていう制度だからです。

参考:所得税法基本通達49-40の2|国税庁

一括償却資産の会計処理方法

電卓とメモ帳

一括償却資産のおおまかな特徴が分かったところで、以下では実際に仕訳や会計処理の方法を見ていきますよ。

細かな取り扱いは、実際に仕訳等を見ながらの方が分かりやすいですからね!

消費税の会計処理方法の違いで微妙に対象になるか否かが変わる

個人事業主が、償却資産を一括償却資産として処理するためには取得価額が10万円以上20万円未満でなければなりません(*)。

* 個人の場合は10万円未満の資産は当然に一時に費用処理することになるので(所得税法施行令138条)、10万円未満の資産を一括償却資産として処理することは出来ないと考えられます。一方で、法人の場合は10万円未満のものでも一括償却資産として処理可能だと思います。

この判定は、消費税の処理を税込経理方式で処理しているなら「税込金額」、税抜経理方式で処理しているなら「税抜金額」で判定します。

たとえば税込経理をしている方が、税抜198,000円(税込217,800円)の備品を購入したら「税込:217,800円」で判定を行います。なので、この事例では一括償却資産として処理することは出来ません。

なお、免税事業者の消費税の処理は税込経理になるので、取得価額の判定は必ず税込金額で行うことになりますよ。

一括償却資産かどうかの判定方法は1セットごとに行う

取得価額が10万円以上20万円未満であるかどうか、つまり、一括償却資産に該当するかどうかの判定は、通常1単位として取引されるその単位毎に行います(参考:所得税基本通達49-39)

具体的には以下のような感じ。

  • 機械及び装置⇒1台又は1基ごと
  • 工具、器具及び備品⇒1個、1組又は1そろいごと
  • 構築物のうち例えば枕木、電柱等単体では機能を発揮できないもの⇒社会通念上一の効用を有すると認められる単位ごと

考え方としては、それ単体で機能するものは1個ずつ判定するし、そうじゃないなら1セット毎に判断するという感じです。(判断迷うことは結構多いと思います)。

【例1) 机12万円・椅子12万円の応接セットを購入】

応接セットは通常「机」と「椅子」がセットになって機能するものなので、「机」と「椅子」をまとめて1単位として取得価額の判定を行います。

従って、今回の場合は合計で24万円となり一括償却資産としては処理出来ません。

【例2)PCを15万円×5台(合計75万円)購入】

PC自体はそれ単体で機能するものなので、5台購入していたとしても1台ごとに判定を行います。今回の場合だと75万円全てを一括償却資産として処理可能です。なお、3台だけ一括償却資産として、2台は普通に減価償却するといった選択も可能ですよ。

【注意】家事按分する時の判定

個人事業主だと家事按分しないとダメな資産もあると思いますが、減価償却費を家事按分する資産でも20万円未満かどうかの判定は資産の取得価額の総額で判定しますよ。

たとえば、按分割合「5:5」の人が30万円の資産を購入したとしましょう。
30万円×0.5=15万円で事業部分だけ切り取ったら20万円未満だから一括償却資産にできる!と考えるのは誤りなので注意しましょう。

一括償却資産購入時の仕訳と減価償却費計上額の仕訳

事例)11月に12万円のPCを5台購入して全てを一括償却資産とした

【購入時の仕訳】

借方貸方摘要
一括償却資産 600,000現金 600,000PC台(5×12万円)⇒一括償却資産

勘定科目は「一括償却資産」として処理して、固定資産台帳や仕訳帳の摘要欄などで資産名称を記入しておきましょう。

【1年目~3年目の減価償却費の計上仕訳】

借方貸方摘要
減価償却費 200,000一括償却資産 200,000一括償却資産として処理したPCの償却費(1年目)

事例では11月に取得していますが、一括償却資産は事業年度途中に取得しても月割しなくて良いので、1年目も含めて60万円÷3=200,000円を減価償却費として計上すればOKです。

一括償却資産を除却した場合の仕訳

事例)先ほどの事例のPC5台のうち2台を2年目に除却した。除却時の仕訳と減価償却費の仕訳はどうなるか?

【除却した時の仕訳】
仕訳なし。

除却した場合はなにも会計処理しません。除却した2台分は一気に費用処理可能かと思ってしまいますが、固定資産除却損などの仕訳も切りません。

【除却した年(2年目)と翌年の減価償却の仕訳】

借方貸方摘要
減価償却費 200,000一括償却資産 200,000一括償却資産として処理したPCの償却費(2,3年目)⇒但し2台除却済

普通に償却費を計上するだけです。摘要欄に除却済のものがあることを記載しておくと良いかもしれません。なお、除却した次の年である3年目も同じ仕訳を切りますよ!

一括償却資産を売却した場合の仕訳

事例)先ほどの事例のPC5台のうち2台を2年目に合計10万円で売却した。売却時の仕訳と減価償却費の仕訳はどうなるか?

【売却時の仕訳】

借方貸方摘要
現金 100,000固定資産売却益 100,000一括償却資産PC5台のうち2台売却

貸方に「一括償却資産」をもってきて収入金額との差額を「固定資産売買損益」として処理したくなりますが、一括償却資産の残高は売却では変わりません。

固定資産売却益だけ登場するのは不思議な感じがしますが、これで正解です。

あくまでも、一括償却資産の残高は減価償却費で減らしていきます。

【売却した年(2年目)と翌年の減価償却の仕訳】

借方貸方摘要
減価償却費 200,000一括償却資産 200,000一括償却資産として処理したPCの償却費(2,3年目)⇒但し2台売却済

除却の場合と同じです。粛々と3年で均等償却していくだけです。

一括償却資産・少額減価償却資産の特例の違いを比較表で紹介

では、最後に一括償却資産と少額減価償却資産の特例の違いを比較表でまとめておきます。

一応、表には10万円未満を一気に費用処理できる「少額減価償却資産」も載せています。

 少額減価償却資産(所得税法施行令138条)一括償却資産(所得税法施行令139条)少額減価償却資産の特例(租税特別措置法28条の2)
取得価額の要件10万円未満10万円以上20万円未満30万円未満
利用できる人の要件誰でも可(白色でも可)誰でも可(白色可)青色申告者かつ中小企業者(*1)
申告時の要件なし申告書に要記載申告書に要記載
損金算入期間取得年度で終わり購入した年から3年間取得年度で終わり
損金算入限度額取得価額全額取得価額÷3取得価額全額
適用上限額なしなし1事業年度につき300万円まで(*2)
償却資産税非課税非課税課税
*1 中小企業者とは、常時使用する従業員の数が500人以下の方のことを指します。通常、個人事業主で500人超の従業員を採用することはないでしょうから、個人事業主の場合は青色申告者であれば少額減価償却資産の特例を利用できます。

*2 期の途中に開業した場合などは月割で上限額を計算します。

一括償却資産(10万円以上20万円未満)と少額減価償却資産の特例(30万円未満)の大きな違いはやはり損金算入限度額の違いでしょうか。

一括償却資産もメリットは大きいですが、経理の事務的な面・節税の面から考えると少額減価償却資産の特例の方がメリットは大きいかなと思います。

どちらにせよ、いずれの制度を適用するかはその時の利益の状況によって決まりますから、税額シミュレーション等をして冷静に決定していきたいとところですね。

【参考:個人事業主の取得価額別の選択できる償却方法の一覧】

取得価額少額の減価償却資産(必要経費 *一括償却資産少額減価償却資産の特例通常の減価償却
10万円未満(*)×××
10万円以上~20万円未満×
20万円以上~30万円未満××
30万円以上×××

* 個人の方は平成10年4月1日以後開始の事業年度に取得した10万円未満の資産はすべて必要経費となるため、そもそも固定資産として計上することはありません。

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