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青色申告で必要な帳簿の種類まとめ!10万円控除・65万円控除の両方に対応!

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青色申告で必要な帳簿

「青色申告するために必要な帳簿ってなんだろう?種類が色々あって分かりにくいな・・・」
「帳簿って申告時に提出が必要なの?必要ないなら付けなくても大丈夫だよね・・・?」

青色申告の帳簿付けは分かりにくいので、初めて青色申告する人からすると非常に面倒ですよね・・・。

なぜ分かりにくいのか?

理由は、青色申告は「帳簿付けの方法×損益認識基準」の違いによって、3つの青色申告の手法が認められているからです。

しかも、どの青色申告の手法を採用するかによって求められる帳簿の種類も変わってきます。これが非常にややこしい。

今回の記事では、3つの青色申告で求められる帳簿の種類はもちろんのこと、作成した帳簿書類等の保存義務や帳簿を付けなかった場合のペナルティの話まで紹介していきますよ。

目次

まずは3つの青色申告の手法を把握!
【複式簿記OR簡易簿記】【発生主義OR現金主義】

冒頭で青色申告には3つの手法があると言いました。それを表にまとめたのがこちらです。

簿記の種類記帳方法損益認識基準青色申告特別控除額
①複式簿記複式簿記発生主義65万円
②簡易簿記簡易簿記(単式簿記)発生主義10万円
③現金式簡易簿記簡易簿記(単式簿記)現金主義10万円

このように青色申告の種類は、「複式簿記OR簡易簿記」「発生主義OR現金主義」の掛け合わせによって、3つに分けられます。

ちなみに、帳簿付けのレベル及び必要帳簿の多さから考えて、3つの手法を難易度順で並べると「①複式簿記>②簡易簿記>③現金式簡易簿記」という感じになります。

「①複式簿記」は青色申告特別控除額が65万円と一際大きいですから、それだけ手間はかかるんですね。

ちなみに、国税庁が求めている青色申告は原則として「①複式簿記による青色申告」です。②③の青色申告の手法は、青色申告の普及を図るために設けられてた簡易的な制度ですよ。

なお、今回の記事は青色申告をするために必要な帳簿類を解説する記事です。

複式簿記とはなんぞや?発生主義とはなんぞや?を説明していると非常に長くなってしまうので、それぞれの詳細は下記の記事でご確認くださいね。

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帳簿の種類の解説

ノート類

ここから、青色申告の種別ごとに必要な帳簿を紹介していくのですが、まずはそもそも「帳簿」にはどんな種類があるのか見ていきましょう。

帳簿とは、事業に関するお金の流れや取引を記録するものであり、大きく分けて「主要簿」と「補助簿」に分けられます。

主要簿は「仕訳帳」と「総勘定元帳」の2つ。
ちなみに、総勘定元帳は仕訳帳に記帳するたびに転記することで結果として作成されるものです。

主要簿の種類意味
仕訳帳
日々の一つの取引を「借方」「貸方」という概念を用いて、複式簿記により記帳していった帳簿。
総勘定元帳
仕訳帳に記帳された取引を勘定科目毎にまとめた帳簿。

なぜこの2つが「主要簿」と言われるのか?というと、簿記及び決算書の作成の根幹をなすものだからです。

もっと具体的に言えば、極端な話この2つの帳簿があれば決算書(貸借対照表も損益計算書も)が作成できるので、この2つが”主要簿”と呼ばれます。

一方で、補助簿とは、その名の通り主要簿の内容を補う目的で作成される帳簿のことで、主として以下のようなものがありますよ。

補助簿の種類意味
現金出納帳(又は預金出納帳)
事業に関連するお金の出し入れの状況を、取引順に記載する帳簿。現預金売上・現預金仕入がある場合には、売上帳や仕入帳の役割も果たしている。
売掛帳
得意先ごとに口座を設けて、掛売上の状況や売掛金の回収状況をまとめていく帳簿。
買掛帳
仕入先ごとに口座を設けて、掛仕入の状況や買掛金の支払状況をまとめていく帳簿。
経費帳
仕入以外の経費(水道光熱費や消耗品費、支払手数料など)について勘定科目ごとに口座を作って、未払・支払の状況を示していく帳簿。
固定資産台帳
固定資産ごとに口座を作り、当該固定資産の種類・取得日・減価償却費・除却の状況など一連の異動をまとめる帳簿
注:口座を設けるってのは、ようはそれ専用のページを作るって事です。たとえばA商店さんへの売上があるならA商店さん専用のページを売掛帳の中に作るって感じ。

帳簿の意味について、おおむね分かったところで青色申告の種類ごとに必要な帳簿を紹介していきます。

説明の便宜上、10万円控除の簡易簿記の方から見ていきますね。

10万円控除の青色申告(②簡易簿記)で必要な帳簿

簡易簿記で求められる帳簿は以下の5つです。

  • 現金出納帳(預金もあるなら預金出納帳)
  • 売掛帳
  • 買掛帳
  • 経費帳
  • 固定資産台帳

この5つは国税庁が「標準的な簡易帳簿」として定めているもので、この5つさえ作成していればとりあえず10万円控除は受けられます。(参考:記帳や帳簿等保存・青色申告|国税庁)。

なお、該当の取引がないものまで帳簿を作成する必要はありません。

たとえば、現金商売だから売掛金も買掛金も発生しない!というのであれば売掛帳や買掛帳を作成する必要はありませんし、固定資産が一切ないのであれば固定資産台帳を作成する必要もありません。

10万円控除の青色申告(③現金式簡易簿記)で必要な帳簿

現金式簡易簿記で求められる帳簿は以下の2つ。

  • 現金主義に基づく現金出納帳(預金もあるなら預金出納帳)
  • 固定資産台帳

こちらは、「②簡易簿記」と比較しても少ないですね。非常に簡単です。

なお、現金式簡易簿記の場合であっても、減価償却は通常通り行う必要があります(参考:所得税法施行令196条2項)。そのため、固定資産があるなら固定資産台帳は作成する必要がありますよ。

65万円控除の青色申告(①複式簿記)で必要な帳簿

①複式簿記で求められているのは以下の2つです。

  • 仕訳帳
  • 総勘定元帳

いわゆる主要簿2つですね。

なぜこれだけで良いのかって言うと、仕訳帳と総勘定元帳あれば貸借対照表も損益計算書も作成できるからです。

税法上も「正確な貸借対照表と損益計算書が作成できる帳簿その他必要な帳簿」を作成して下さいとしか書いておらず、実質的に「仕訳帳」「総勘定元帳」の2つあれば事足ります。(所得税法施行規則57~59条あたり参照)

総勘定元帳は全ての勘定科目の取引履歴を“勘定科目ごとに”にまとめた帳簿です。

というか、総勘定元帳が全ての勘定科目の補助簿みたいなものですからね。たとえば、売上や売掛金を計上するにしても得意先ごとに補助科目設定すれば、わざわざ売掛帳とかで別途管理しなくても総勘定元帳を見れば取引先ごとの売掛残高も分かります。

ただ、主要簿とは違う観点から取引を整理しておきたいとか、主要簿だけでは分かりにくい!ということもあると思うので、必要に応じて以下のような補助簿を作成してもOK。

  • 現金出納帳(預金もあるなら預金出納帳)
  • 売掛帳
  • 買掛帳
  • 経費帳
  • 固定資産台帳 など
主要簿2つで良いと書きましたが、結局青色申告決算書で求められるものは補助簿を作っておいた方が良いですよ。たとえば、減価償却費の明細を出すために固定資産台帳はあった方が便利ですし、給料賃金の内訳を書くためには賃金台帳があった方が便利です。

主要簿2つで良いと書いたのは、頑張れば主要簿があれば何とかなる!という意味です。管理の面で別途帳簿をつけた方が効率的なのであれば、上記の補助簿に限らずドンドン作っていくべきです。もちろん、総勘定元帳で管理できるものをわざわざ作る必要はないですけどね。

必要帳簿類のまとめ

3つの青色申告で求められる帳簿の種類をまとめておきますよ。

複式簿記簡易簿記現金式簡易簿記
必要な帳簿
・仕訳帳
・総勘定元帳

その他、必要に応じて
・現金出納帳(預金出納帳)
・売掛帳
・買掛帳
・経費帳
・固定資産台帳 など
・現金出納帳(預金出納帳)
・売掛帳
・買掛帳
・経費帳
・固定資産台帳
・現金主義に基づく現金出納帳(預金出納帳)
・固定資産台帳

【参考】帳簿の付け方・記載例

帳簿の付け方に関しては、国税庁のパンフレットで非常に分かりやすく説明されているので、そちらを参照して下さい。

帳簿の記帳の仕方【事業所得者用】-国税庁PDF

不動産所得や農業所得がある方は別途パンフレットが用意されています。

個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について|国税庁

上記ページの中ほどに帳簿の記載例のパンフレットが所得ごとに掲載されているので、そちらを確認して下さい。

青色申告者の帳簿・書類保存義務!

ファイルボックス

帳簿は作って終わりではありません。作成後一定期間保存する必要があります。

帳簿だけでなく、帳簿を作成する元になった領収書や請求書はもちろんのこと、帳簿から作成した貸借対照表や損益計算書、棚卸表なども保存しなければなりませんので、併せて紹介しておきます。

種類保存が必要なもの保存期間(*1
帳簿【主要簿】仕訳帳、総勘定元帳
【補助簿】現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など
7年
書類決算関係書類損益計算書、貸借対照表、棚卸表など7年
現金預金取引等関係書類領収証、小切手控、預金通帳、借用証など7年(*2
その他の書類取引に関して作成し、又は受領した上記以外の書類(請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など)5年
(出典:記帳や帳簿等保存・青色申告|国税庁

*1 保存期間の起算日は、基本的には該当年分の確定申告日(通常は3月15日)の翌日から7年または5年と考えればOKです。(たとえば、令和2年分の帳簿等は令和3年3月15日の翌日から起算して7年または5年なので、令和10年か令和8年まで保存ってことになります。)
*2 現金式簡易簿記を採用している人は5年でOKです。

なぜ7年のものが多いかというと、所得税の時効の最長期間が7年だからです。
7年経たずに帳簿・書類を廃棄されると調査官が調査する元が無くなりますからね。保存期間を守らないと青色申告の承認取消や推計課税の対象になってしまう可能性もあるので、必ず保存しておきましょう。

あと、当然ながら自分が作成する必要がないものはそもそも保存義務もありませんよ。たとえば、簡易簿記の人は主要簿(仕訳帳・総勘定元帳)や貸借対照表は作成する義務が無いので、保存義務も当然発生しません。

帳簿は提出する必要なし!提出するのは青色申告決算書!

帳簿類は作成・保存義務はあるものの提出義務はありません。

確定申告時に提出するのは「青色申告決算書(貸借対照表と損益計算書含)」と「確定申告書」です。

もちろん、何かしらの特例等を受ける場合には明細の提出が必要になったりしますが、基本的に帳簿や領収書等の書類は提出する必要が無いことは知っておきましょう。

住宅ローン控除とか医療費控除とか受ける場合には別途書類の提出が必要ですよ。このセクションで言っているのはあくまでも「事業所得」とか「不動産所得」などの所得事項に関連した提出書類の話です。

青色申告なのに帳簿をつけてない!ペナルティとかあるの?

ペナルティ

そもそも、帳簿の作成義務・保存義務が所得税法上定められているので違法行為と言えば違法行為です。また、帳簿を付けていないのに青色申告の各種特典を利用しているのも良くないですね。

なので、帳簿をつけてない人はとにかく手元にある資料を元に帳簿を作成するようにしましょう。

その上で、帳簿をつけていない場合のペナルティーを紹介しておくと以下のようなものがありますよ。

  • 青色申告の承認取消になるかも
  • 推計課税の対象になるかも
  • 重加算税の対象になるかも
  • 消費税の仕入税額控除が認められないかも

いずれもかなり恐ろしいものです。

もちろん、個人事業主に税務調査が入る確率はかなり低いのですが、もし調査が入った時に帳簿をつけていなかったら大変なことになるので、日頃から帳簿付けを頑張りましょう!

最後に~手書き・エクセル・ソフト、どの方法で帳簿付を行うべき?~

手書・EXCEL・会計ソフトのいずれで帳簿付けを行うべきか?

と言われると、やはり「会計ソフト」一択です。手書きは時間がかかりすぎますし、EXCELにしても会計ソフトを使う場合と比べるとかなり時間がかかります。

もちろん、年間通しての仕訳件数が100件もいかないとか仕訳の件数が少なければ、手書きやEXCELでも帳簿付や決算書の作成業務は可能です。(もちろん最低限の簿記の知識もいりますが)。

しかし、それでも「時間を買う」という感覚で考えれば「会計ソフト」が一番望ましく、コスパは高いと思います。

仮に会計ソフトを使うことで65万円控除が受けられれば、それだけでも約10万円程度の節税になります(所得が200万円の場合)。

個人事業主用の会計ソフトのコストは年間1万円程度と比較的安いので、会計ソフトを導入することによる時間の節約・青色申告特別控除による節税を考えれば、十二分に元が取れますよ。

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