3種類ある青色申告の違いとは?~複式簿記・簡易簿記・現金式簡易簿記~

3つの青色申告(複式簿記・簡易簿記・現金式簡易簿記)青色申告

青色申告と言っても、帳簿の付け方によって「①簡易簿記②現金式簡易簿記③複式簿記」の3種類に分けることが出来ます。

この記事では、3種類ある青色申告がそれぞれどう違うのか?どれを採用すべきなのか?を紹介していきます。

青色申告の比較!複式簿記・簡易簿記・現金式簡易簿記はどう違う?

まずは一覧形式で3種類の青色申告の概要を見てみましょう。

 複式簿記簡易簿記現金式簡易簿記
青色申告特別控除額
65万円
10万円
10万円
申告期限遵守が求められる青色特典(*)
・純損失の繰戻還付
・65万円控除
・純損失の繰戻還付
・純損失の繰戻還付
記帳方法
複式簿記(正規の簿記)
単式簿記(簡易簿記)
単式簿記(簡易簿記)
損益認識基準
発生主義
発生主義
現金主義
申請書
所得税の青色申告承認申請書
所得税の青色申告承認申請書
青色申告承認申請(兼)現金主義の所得計算による旨の届出書
所得種類
・事業所得
・事業的規模の不動産所得
・事業所得
・事業的規模でない不動産所得
・山林所得
・事業所得
・不動産所得
所得要件
なし
なし
前々年度の青色事業専従者給与控除前の所得が合計300万円以下
必要帳簿
・仕訳帳
・総勘定元帳

その他、必要に応じて
・現金出納帳
・売掛帳
・買掛帳
・経費帳
・固定資産台帳
・預金出納帳など
・現金出納帳
・売掛帳
・買掛帳
・経費帳
・固定資産台帳
・現金主義に基づく現金出納帳
・固定資産台帳
確定申告提出書類
・確定申告書B
・青色申告決算書
・確定申告書B
・青色申告決算書(貸借対照表は不要)
・確定申告書B
・青色申告決算書(現金主義用要)
* 青色申告の特典記事の中で挙げている主要な青色特典の「特別控除」「専従者給与」「少額減価償却資産の特例」「純損失の繰越控除・繰戻還付」「貸引一括評価」「棚卸資産の評価方法」のうちから記載しています。

以下、簡単にそれぞれの項目について補足していきます。

青色申告特別控除額を含む青色申告特典の話

青色申告にはさまざまなメリット(特典)がありますが、基本的にはどの青色申告の方法を取ろうが、青色申告の特典の内容は変わりません。

唯一変わるのが、「青色申告特別控除の金額」です。複式簿記の場合だけ65万円控除となり、その他は10万円控除になります。

ちなみに所得金額ごとに、10万円控除OR65万円控除でどれくらい節税(所得税+住民税の合計)になるのかを示したのが次の表です。

所得金額10万円控除
節税額
65万円控除
節税額
差額
200万円1.5万円9.75万円8.25万円
400万円2万円13万円11万円
600万円3万円19.5万円16.5万円
1,000万円3.3万円21.45万円18.15万円
1,500万円4.3万円27.95万円23.65万円
注:計算は、必要最小限度の所得控除額がある単身者を想定して行っています。

特別控除額による節税効果!という意味では65万円控除の優位性がはっきりと分かりますね。

なお、「青色申告(複式簿記)」で65万円控除を受けるためには「期限内申告」が必須となります。

期限後申告をしてしまうと、せっかく「複式簿記×発生主義」で記帳をしているのに、10万円控除になってしまうので注意して下さい。

簡易簿記と現金式簡易簿記はもともと10万円控除なので、期限後申告になったとしても10万円控除は受けられますよ。

その他、期限内申告が求められる青色特典は「純損失の繰戻還付」ですね。これは全ての青色申告方式で共通です。

青色申告特典の詳細を知りたい方は下記記事もご参照くださいね。

凄すぎ!?青色申告の特典!税制メリットを具体的な数字とともに紹介!
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記帳方法の違い

記帳方法は「単式簿記」と「複式簿記」に分けられます。

単式簿記とは、基本的に一つの勘定科目だけを注目してその増減を記帳していくスタイルで、代表例として預金通帳や家計簿が挙げられます。

一方、複式簿記は一つの取引を「借方」「貸方」に分けて複合的に記帳していくスタイルで、いわゆる「正規の簿記の原則」に従って記帳方法です。65万円の青色申告特別控除を受けるためにはこちらの記帳法を採用する必要があります。

両者の違いの詳細は下記記事を御覧ください。

単式簿記と複式簿記の違い【具体例付で解説】
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損益認識基準

損益認識基準には「現金主義」と「発生主義」の2種類あります。

現金主義は現預金の入出金があった時のみ損益を認識する方法です。

一方で、発生主義は現預金の入出金に関わらず、取引の経済的事実が発生した時の損益を認識します。

ちなみに、”認識する”イコール”記帳をする”ということです。

全ての個人事業主は「発生主義」で記帳することが求められており、例外として「現金式簡易簿記の青色申告」を選択した人のみが現金主義による記帳を採用しても良いことになっています。

個人事業主が知っておきたい現金主義と発生主義の違い!青色申告者は現金主義でもOK!?
現金主義と発生主義の違いについて「仕訳」と「損益」の観点から具体的事例を紹介しています。ちなみに個人事業主の場合でも原則は「発生主義」での記帳であり、発生主義で記帳することでさまざまな青色申告特典を受けられるようになります。

青色申告承認申請書の種類

「簡易簿記による青色申告」または「複式簿記による青色申告」を選択する場合は「所得税の青色申告承認申請書」を提出します。

書き方は下記記事を参考にして下さい。

よく分かる!青色申告承認申請書の書き方・記入例【項目別に解説】
所得税の青色申告承認申請書の書き方を項目別に徹底解説しています。書き方はそれほど難しくないので、この記事を読んでサクッと提出してしまいましょう。併せて承認申請書の提出期限の話や承認申請書提出時・提出後の注意点もまとめています。

 

「現金式簡易簿記による青色申告」を選択したい方は「所得税の青色申告承認申請(兼)現金主義の所得計算による旨の届出書」を提出して下さい。

いずれも、原則として青色申告に変更しようとする年の3月15日までに提出する必要がありますので、提出期限に要注意です。

参考:青色申告承認申請書の提出期限の話【記事未了】

所得種類と所得要件

青色申告は「事業所得・不動産所得・山林所得」を有する方だけに認められた申告方法です。

ただし、所得の種類と所得要件によって選択できる青色申告の種類が異なります。まとめると以下のようになります。

  • 山林所得だけの人は「簡易簿記による青色申告」のみ利用可能
  • 事業所得・不動産所得の人は3種類すべての青色申告を選択可能
  • ただし、不動産所得の人が「65万円控除を受けられる複式簿記×青色申告」を選択するには事業的規模である必要がある
  • ただし、事業所得・不動産所得を有する人が「現金式簡易簿記による青色申告」を選択する場合には前々年度の所得が300万円以下でなければならない

不動産所得の事業的規模の基準は下記記事を参照して下さい。

参考:不動産所得の事業的規模の判断基準【記事未了】

あと、現金式簡易簿記を採用する場合の所得基準は要注意ですね。ここでの所得は「売上-経費(青色事業専従者給与控除前)」で計算され、前々年度の所得が300万円以下の方しか現金式簡易簿記は採用できません。

所得が300万円を超えると、普通の簡易簿記もしくは複式簿記に変更しないとダメですよ。

必要帳簿の違い

電卓を叩く手と出納帳

基本的には表にまとめた通りです。

65万円控除を受けるためには、主要簿(仕訳帳・総勘定元帳)を作成する必要がありますが、10万円控除であれば補助簿(現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳)のみでOKとなっています。現金式簡易簿記なら、さらに必要帳簿が少ないですね。

ちなみに、自分の事業では関係のない補助簿は作る必要ありません。
たとえば、現金商売で売掛金が発生すること無いのであれば、売掛帳を作成する必要はありません。

なお、詳しい帳簿の説明や帳簿類の保存期間などは下記記事でまとめていますので、そちらもご参照下さい。

確定申告時の提出書類

いずれの青色申告を採用する場合でも「確定申告書B」は必要です(参考記事:確定申告書AとBの違い【記事未了】)。

青色申告決算書に関しては、どの方法を採用するかによって以下のように必要なページ数が変わりますよ(注:事業所得の場合で説明しています)。

帳簿付の方法青色申告決算書の種類必要な青色申告決算書ページ
複式簿記青色申告決算書(一般用)全てのページ(4P)が必要
簡易簿記青色申告決算書(一般用)合計3枚必要。4ページ目の貸借対照表は不要。
現金式簡易簿記青色申告決算書(現金主義用)現金主義用はそもそも2ページしかない。2ページとも提出。
(参考ページ:確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書等|国税庁

青色申告決算書の書き方に関しては下記ページで具体例付きで解説していますので、そちらも参考にして下さい!

参考:青色申告決算書の書き方【記事未了】

まとめ~どの方法を採用すべき?

チェックマークと手

以上、採用する帳簿付けの種類という観点から青色申告を分類・比較してきました。

どの方法を採用すべきか?は意見の分かれるところですが、青色申告をするのであれば「複式簿記の青色申告」⇒つまり65万円の青色申告特別控除を受けられる青色申告を選択した方が良いでしょう。

手書きの時代だと65万円の青色申告特別控除を受けるのはかなり難しかったと思いますが、今は会計ソフトがあります。

会計ソフトに日々の仕訳さえ記帳さえしておけば必要帳簿は自動的に作成されるため、65万円控除を受けるためのハードルはかなり下がっています。

本文でも見たように、所得が200万円程度の場合でも、65万円控除と10万円控除では納税額に8万円以上の差が発生します。
さらにいえば、青色申告特別控除額は国民健康保険料の計算にも反映されるので、国民健康保険料のことも考えると、手残りするお金の差はもっと大きくなりますよ。

個人事業主の会計ソフトは年間1万円程度で購入できますので、これだけ節税できるのであれば会計ソフトを導入して65万円控除を目指す方が合理的です。

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